内装リフォームの現場で20年以上、数え切れないほどの家のクロスを張り替えてきましたが、お客様が完成後に一番喜んでくださるのはやはり新築のように綺麗になったと言っていただける瞬間です。しかしその綺麗を実現するために私たちがどれだけの工程を裏側で積み重ねているかはあまり知られていません。多くの方は新しい壁紙を貼る作業がメインだと思われますが、プロの視点から言えば張替えリフォームの成功の八割は新しい紙を貼る前の下地処理にかかっています。古いクロスを剥がすと下地の石膏ボードには以前の糊の残りや紙が剥がれずに残った段差、さらには建物の揺れによって生じた微細なひび割れなどが現れます。これらを放置したまま新しい紙を貼っても数ヶ月後には浮きや凹凸となって表面に出てきてしまいます。私たちはこの下地にパテを何度も埋めては乾かしては研磨し、指先で触れても全く境目が分からないほど平滑な面を作り上げます。この地道な作業をどれだけ徹底して行うかが仕上がりの寿命を左右します。またクロスの選び方についてもプロとしてのアドバイスがあります。特に築年数の古い住宅をリフォームする場合、下地の歪みが避けられないことがあります。そういった現場では表面がツルツルとした薄手のクロスを選ぶのではなく、少し厚みがあり表面にエンボス加工が施された織物調のクロスをお勧めしています。厚手のクロスは下地の微妙な凹凸を吸収してくれるため、時間が経ってもアラが目立ちにくく長く美しさを保つことができるからです。逆に光沢感の強いモダンなクロスは非常にデリケートで下地の処理に極めて高い精度が要求されるため、施工費も割高になることがあります。また糊の重要性も忘れてはいけません。近年の糊はシックハウス症候群に配慮した高品質なものが主流ですが、現場の室温や湿度、そして下地の吸い込み具合に合わせて水の配合を変える職人の勘が求められます。糊が乾くスピードを計算しながら継ぎ目、いわゆるジョイントをどこに持ってくるかを考え、一ミリの隙間もなく、かつ重ねすぎないようにカッターを入れる瞬間は今でも全神経を集中させます。最近はDIYブームでご自身で張り替える方も増えていますが、吹き抜けや天井、複雑な梁がある場所などはやはり私たちプロの出番です。足場の確保から柄合わせの正確さ、そして幅木や廻り縁との境目のコーキング処理まで、細部に宿る品質がその後の暮らしの心地よさを支えると自負しています。