長年、街の建具店で網戸の修理と張り替えに携わってきた職人の言葉を借りれば、網戸のメッシュ選びには、実は施工性という隠れた重要な視点が存在します。一般の方からすれば、メッシュ数は単なるスペックの数値に見えますが、現場で実際に網を張る職人にとっては、その数値が作業の難易度を大きく左右するのです。職人によれば、最も扱いやすいのは十八から二十メッシュ程度の標準的な網です。適度な厚みとコシがあるため、ローラーでゴムを押し込む際も網がヨレにくく、ピンと均一に張りやすいのが特徴です。しかし、これが二十四メッシュを超え、さらに三十メッシュといった極細の製品になると、話は変わってきます。メッシュが細かくなるほど、一本一本の糸は細くなり、網全体がしなやか、あるいは非常に柔らかい質感になります。このような繊細な網を歪みなく張るためには、熟練した力加減が必要になります。少しでも網を引っ張りすぎると、網目が菱形に歪んでしまい、せっかくの防虫性能が損なわれるだけでなく、見た目も悪くなってしまいます。逆に、たるんだ状態で固定してしまうと、風が吹くたびに網がパタパタと音を立て、すぐに枠から外れる原因にもなります。職人は、網のメッシュ数に合わせて網押さえゴムの太さを微調整することもあります。網が細かくて薄い場合は、少し太めのゴムを選ばなければ、溝の中でしっかりと固定されないことがあるからです。また、職人は掃除のしやすさもメッシュ選びのポイントだと指摘します。三十メッシュなどの極細タイプは、防虫効果こそ絶大ですが、霧吹きやブラシを使った掃除の際、網目が細かすぎて水が通りにくく、かえって汚れを押し込んでしまうことがあります。そのため、職人はお客様に対し、まずは二十四メッシュ程度の、防虫性とメンテナンス性のバランスが取れた製品を勧めることが多いそうです。もし、どうしてもそれ以上の細かいメッシュを希望する場合は、糸に防汚加工が施されているタイプを選ぶようアドバイスをしています。道具の進化により、以前よりは施工しやすくなったとはいえ、やはり高メッシュの張り替えはプロの技が光る領域です。数値上の性能だけでなく、それを維持するための手間や、施工時の確実性までを含めて考えるのがプロの教える極意です。
網戸職人が教えるメッシュの細かさと施工の難易度の関係