現代建築の設計において畳部屋をあえて残すか、あるいはすべてフローリングに統合するかという問いは常に議論の対象となりますが、私たちが提案するのはその二つを対立させるのではなく、互いの美学を融合させるアプローチです。和室をフローリングに変えるという行為は、日本の空間構成が持つ境界の曖昧さを現代的に再解釈するチャンスでもあります。例えば、リビングの一部に畳の小上がりを残し、その周囲をフローリングで囲むことで、椅子に座る生活と床に座る生活をシームレスに繋ぐことができます。畳からフローリングへとリフォームを行う際に建築家がまず注視するのは、光の反射率と視線の高さです。畳は光を吸収し拡散させる性質がありますが、フローリングは光を鏡面のように反射させるため、部屋全体の明るさが劇的に変わります。この光の変化を計算に入れ、壁の色や照明の配置を再構成することで、単に床を張り替えただけではない、洗練された住空間が生まれます。また、和室の鴨居や障子の桟が作り出す直線的な美しさは、実はモダンなフローリングの直線と非常に親和性が高いのです。無垢のナラ材やチェリー材など、表情豊かな木目を持つ床材を選ぶことで、古い柱が持つ経年の風合いを最大限に引き立てることが可能です。私たちはこれを経年美化の調和と呼んでいます。さらに、天井の仕上げについても、床が洋風に変わるからといって安易にクロスを貼るのではなく、元の竿縁天井や格天井を活かすことで、歴史の重層性を感じさせる空間になります。フローリング化された部屋に置く家具も、あえて北欧デザインの名作椅子などを選ぶと、和の静謐さと西洋の機能美が見事に共存します。畳からフローリングへの変更を、単なる古くなったものの交換と捉えるのではなく、日本の住文化が培ってきた豊かな空間感覚を現代の技術でアップデートし、自分たちのライフスタイルに最適化された美学を構築するプロセスとして捉えてほしいと考えています。