住まいの改修を考え始めるとき、その動機は人それぞれです。しかし、その動機の根底にある目的意識を探ることで、あなたに必要なのが「リフォーム」なのか「リノベーション」なのかが、より鮮明になります。この二つのアプローチの本質的な違いは、工事の規模以上に、その目的が「原状回復」にあるのか、それとも「価値創造」にあるのか、という点にこそ見出すことができるのです。まず、「リフォーム」の目的は、そのほとんどが「原状回復」にあります。リフォームを検討するきっかけは、多くの場合、具体的な「不具合」や「劣化」です。「キッチンの蛇口から水が漏れる」「お風呂のタイルが割れている」「壁紙が汚れて黄ばんできた」。これらの問題は、日常生活における不便や不快、あるいは安全性の低下に直結します。そのため、リフォームの目的は、これらのマイナス要因を取り除き、以前のような問題のない、安全で快適な状態に戻すことに置かれます。つまり、失われた機能や美観を取り戻し、住まいを「本来あるべき姿」に修復することがゴールです。そこにあるのは、暮らしの基盤を維持し、安心できる生活環境を確保したいという、堅実で実用的な願いです。次に、「リノベーション」の目的は、より積極的で未来志向な「価値創造」にあります。リノベーションの動機は、現状への不満というよりも、理想の暮らしへの「ビジョン」や「夢」から生まれます。「子供が独立したので、使わなくなった二つの部屋を繋げて、夫婦の趣味のための広いアトリエにしたい」「中古マンションを買って、自分たちの好きなカフェのような内装に一から作り変えたい」「古い木造住宅の性能を向上させて、夏は涼しく冬は暖かい、健康的な暮らしを送りたい」。これらの願いは、既存の建物のポテンシャルを最大限に引き出し、元の状態にはなかった新しい価値、新しい暮らし方を付け加えようとする創造的な意志の表れです。リノベーションは、単なる修繕ではなく、住む人のライフスタイルや美意識を空間に投影し、暮らしの質そのものを向上させることを目指します。
目的はどちら?「原状回復」か「価値創造」か