「リフォーム」と「リノベーション」の違いを、より具体的に理解するために、同じ築25年のマンションに住む、二つの家族の物語を見ていきましょう。彼らが抱える課題と、それに対してどのような選択をしたのか。そのプロセスの中に、二つのアプローチの本質的な違いが浮かび上がってきます。Aさん一家の物語:暮らしの安心を取り戻す「リフォーム」 Aさん一家は、夫婦と高校生の子供一人の三人家族。長年暮らしてきたマンションは、愛着がある一方で、あちこちに経年劣化が見られるようになりました。特に悩みの種だったのが、古くて収納の少ないキッチンと、冬場に寒く、タイルのひび割れが気になる浴室でした。彼らの目的は、これらの具体的な不具合を解消し、再び安全で快適な日常生活を取り戻すこと。そこで、Aさん一家は「リフォーム」を選択しました。計画の中心は、劣化した設備の更新です。キッチンは最新のシステムキッチンに、浴室は保温性の高いユニットバスにそれぞれ交換。そして、子供部屋とリビングの薄汚れた壁紙を、新しいものに張り替えました。既存の間取りは一切変更せず、あくまで劣化した部分を新しいものに入れ替える「原状回復」に重点を置いた工事です。工事期間は約二週間。部分的な工事なので、住みながらでも対応可能でした。リフォーム後のAさんの住まいは、水回りを中心に機能性が格段に向上し、内装もきれいになって、新築当時の快適さを取り戻しました。これは、暮らしの基盤を堅実に立て直す、典型的なリフォームの成功例です。Bさん一家の物語:理想の暮らしを創造する「リノベーション」 一方、Bさん一家は、夫婦と小学生の子供二人の四人家族。彼らの悩みは、部屋数は足りているものの、リビングが狭く、家族全員でゆったりと過ごせないことでした。また、北側の部屋は日中でも薄暗く、ほとんど物置状態。彼らの目的は、単に古い部分を新しくするのではなく、家族のコミュニケーションがもっと豊かになるような、開放的で明るい空間をゼロから「創造」することでした。そこで、Bさん一家は「リノベーション」を選択しました。工事は、まずリビングと隣の和室を隔てていた壁を撤去することから始まりました。さらに、北側の部屋の壁も取り払い、家全体を一つの大きなワンルームのような空間に再構成。家の中心には、家族みんなで料理を楽しめる大きなアイランドキッチンを新たに設置しました。
リフォームで快適を取り戻すか、リノベーションで暮らしを創るか