住まいの改修を計画する際、そのプロジェクトが「リフォーム」の領域に留まるのか、それとも「リノベーション」の領域に踏み込むのかを分ける、一つの決定的な指標があります。それは、「設計における自由度」です。どこまで自分の理想やこだわりを空間に反映させることができるのか、その自由度の違いこそが、二つのアプローチの明確な境界線を示しています。まず、「リフォーム」における設計の自由度は、比較的「限定的」です。リフォームの基本は、既存の間取りや建物の構造を大前提とした上で、劣化した部分や古い設備を新しいものに交換することにあります。例えば、キッチンのリフォームを考える場合、既存の給排水管や排気ダクトの位置、設置スペースの寸法といった制約の中で、設置可能なシステムキッチンの中から、色や扉のデザイン、機能を選んでいくことになります。壁紙を張り替える際も、数多あるサンプルの中から好きなものを選ぶ自由はありますが、それはあくまで「壁紙を選ぶ」という、定められた枠組みの中での選択です。つまり、リフォームにおける設計とは、既存の制約条件下で、最適なパーツや仕上げ材をカタログなどから選び、組み合わせていく「セレクション(選択)」に近い行為と言えるでしょう。一方、「リノベーション」における設計の自由度は、リフォームとは比較にならないほど「広大」です。リノベーションは、既存の間取りや内装を一度リセットし、白紙の状態から新しい空間を構想することから始まります。特に、建物の構造躯体(骨組み)だけを残してすべてを解体する「スケルトンリノベーション」では、その自由度は注文住宅に匹敵します。「壁を取り払って、暗かった北側の部屋にも光が届くようにしたい」「キッチンを家の中心に移動させて、家族と会話しながら料理ができるアイランドキッチンにしたい」「玄関の横に、趣味の自転車を気兼ねなく置ける広い土間スペースを作りたい」。こうした、暮らしの骨格そのものを変えるような大胆な発想も、リノベーションであれば実現可能です。リノベーションにおける設計とは、単に既製品を選ぶだけでなく、光の取り入れ方、風の通り道、家族の動線、そして将来のライフスタイルの変化までをも見据えて、空間そのものを「クリエイション(創造)」していく行為です。
設計の自由度が示す、リフォームとリノベーションの境界