壁に走る一本の線。それは、私たちに不安を与える存在ですが、一口に「ひび割れ」と言っても、その背景には様々な原因があり、専門的にはいくつかの種類に分類されます。これらの種類を知ることは、そのひび割れが持つリスクの度合いを理解し、適切な次のアクションを考える上で、非常に役立ちます。まず、最も頻繁に目にし、かつ比較的危険度が低いのが「ヘアークラック」です。その名の通り、髪の毛のように細い、幅0.3mm以下のひび割れを指します。これは、主に壁の表面に塗られた塗装(塗膜)や、モルタルなどの仕上げ材が、乾燥や温度変化によって収縮することで発生します。建物の構造的な強度には直接影響しないことがほとんどで、主として美観上の問題となります。これと似たものに「乾燥クラック」があります。コンクリートやモルタルが固まる過程で、内部の水分が蒸発して体積が減少することによって生じるひび割れで、これも構造上の問題は少ないとされています。一方、最も警戒が必要なのが「構造クラック(構造的なひび割れ)」です。これは、地震の揺れや、地盤が不均一に沈下する不同沈下、あるいは設計・施工上の問題などによって、建物そのものの骨格(構造体)に歪みが生じ、それが壁のひび割れとして現れたものです。幅が0.3mmを超え、ひび割れが壁の内部深くまで達しているのが特徴で、放置すると建物の耐震性を著しく低下させる、極めて危険なサインです。特に、開口部の隅から斜め45度に走るひび割れや、基礎部分のひび割れは、構造クラックである可能性が高いと言えます。この他にも、外壁のサイディングボードの継ぎ目を埋めているコーキング材が劣化して裂ける「コーキングのひび割れ」も、雨漏りの直接的な原因となるため注意が必要です。自分の家の壁にあるひび割れがどの種類に当てはまるかを正確に特定するのは難しいかもしれませんが、その危険度を意識するだけで、専門家への相談という次のステップへスムーズに進むことができるはずです。
ヘアークラックだけじゃない!壁のひび割れ種類別診断と原因